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在宅就労のすすめ

土屋竜一は沖電気工業株式会社の特例子会社、株式会社沖ワークウェルに就職し、在宅勤務社員として働いています。自宅での仕事とはいえ、重度の障害を持ちながらの勤務は厳しいものがあります。しかしそれ以上に、社会に必要とされることの充足感は大きいものです。労働して報酬を得て、税金や保険料を支払う。そんな当たり前のことが自信となり、誇りを持って生きるための原動力になるのです。

土屋竜一の場合

音楽家としてはいわゆるセミプロでしたが、著述や講演の仕事も合わせて、地元を中心に需要があり、収入もそれなりにありました。ところが不況の煽りで、2004年頃から仕事が入って来なくなったのです。二人目の子どもが生まれたこと、障害者自立支援法の影響などで出費がかさむようになり、就職を決意しました。

通勤は無理。在宅でできる仕事はないか。インターネットで情報を探りました。何ヶ月経っても何も得られず、あきらめかけたときに沖ワークウェルの求人に出会いました。「通勤できない重度障害者」を条件に、在宅勤務社員を募っていたのです。体力や生活環境の面での不安もありましたが、思い切って応募をしました。

実は、私は高校卒業後、当時めずらしかったワープロをリースで借りて、自宅で入力の仕事を請けていました。つまり在宅就労の経験があったのです。その後入った音楽の世界では、パソコンを駆使。早くからインターネットにつなぎ、ホームページも作っていました。そういったことが採用の決め手となったようです。

入社から4年。健康が第一という会社側の配慮もあって、自己管理をしながら、快適な環境のもとで在宅勤務を続けています。40歳を超えてからの転職でつぶしがきかず、つまずくことも多々あるのですが、ここへきて何とか地に足が着いてきた感じがします。

長野県雇用開発協会発行の機関誌で受けたインタビューが、SBCラジオ「里枝子の窓」の公式サイトに載っています。在宅勤務について語っていますので、そちらも読んでみてください。

株式会社沖ワークウェル

もともとは、1998年に沖電気工業株式会社が社会貢献活動として始めた、重度肢体障害者の在宅雇用によって生まれた組織です。2004年に特例子会社として生まれ変わりました。四肢に障害があり通勤が困難なメンバーが、パソコンとインターネットを駆使して在宅勤務をしています。バーチャルな音声会議システム「ワークウェルコミュニケータ™」を活用し、離れたメンバー同士のコミュニケーションを円滑に行っている点が画期的です。

重度肢体障害者を積極的に在宅雇用し、一流のビジネスパーソンを育てている沖ワークウェルは、様々な方面から注目されています。インターネットで読める記事には、以下の例があります。

日本でいちばん働きやすい会社

土屋竜一が、沖ワークウェルの歴史と取り組み、働く仲間の姿を描いたルポルタージュを執筆。2010年2月に中経出版から「障害者が思いっきり仕事できる 日本でいちばん働きやすい会社 〜OKIネットワーカーズ物語〜」として刊行されました。重度障害を持ちながらも働く意欲のある方やご家族、関係者の皆様に、ぜひ読んでいただきたい本です。沖ワークウェルでは、この本を全国の特別支援学校に寄贈しました。

この「日本でいちばん働きやすい会社」の出版記念として、沖ワークウェル主催による「重度障害者在宅雇用セミナー」を、2010年6月、地元(長野県佐久市)で開催しました。下記リンク先の新聞記事をご覧ください。

在宅就労を実現させるには・・・

障害者の就労支援は、国や自治体の施策の一つになっています。「障害者の雇用促進法」に基づく制度や措置もたくさんあります。企業の障害者雇用の動きも、在宅雇用も含めて盛んになってきました。門戸がどんどん開かれれば、就労のチャンスも増えてくるはずです。

実際、重度の障害を持ちながら就職し、パソコンとインターネットを駆使して在宅勤務をしている人がたくさんいます。強い意志があれば、今や、重い障害があっても働ける時代なのです。厚生労働省の協力で発足した「ATARIMAEプロジェクト」のホームページをご覧ください。

とはいえ、仕事ができなければ話になりません。ある程度の知識と技術が必要です。そのためには、在宅就労希望者のために設けられた訓練を受けるのが最適でしょう。社会福祉法人東京コロニーのIT技術者在宅養成講座、財団法人東京しごと財団の障害者委託訓練e-ラーニングコースなどに注目してください。

沖ワークウェルでも、委託訓練や在宅雇用制度導入サービスなど重度障害者の在宅就労を進める活動を行っています。