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痰の自動吸引装置

ついに「痰の自動吸引装置」が発売になりました!

専用の気管カニューレ内に設けられた吸引孔につながるラインと、専用の電動吸引機を接続しておき、たまってくる痰をゆっくり持続吸引するものです。人工呼吸器で暮らす患者とその家族の、まさに救世主です。

過酷な介護作業「痰の吸引」

気管切開をした上で人工呼吸器をつけていると、痰の分泌が盛んになります。痰が詰まると窒息の恐れがありますので、随時「吸引」をしなくてはなりません。これは医療行為とされ、在宅の場合は家族が担うことになります。昼夜時間を問わず必要な介護作業であり、殊に夜間睡眠時は、何度も起きなければならないので大変です。また患者本人も、深夜に何度も家族を起こさなければならないことへの負い目と、痰を取らなければ死につながるという不安で熟睡できません。

医師の思いやりが生んだ、「痰の自動吸引装置」

「痰の自動吸引装置」の筆頭開発者、医師の山本真さん(注1)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の在宅診療を進めていました。その中で、介護に当たる家族の負担の問題にも心を寄せました。

特に痰の吸引は、随時行わなければ生命の危険にもつながる介護です。しかし現法律において痰の吸引は医療行為。在宅の場合、その役割は家族にしか許されません。そのため家族は常に拘束され、夜間睡眠中であっても気を抜くことができません。

「(介護に当たっている家族を)せめて朝までゆっくり寝かせてあげたい」
山本さんのその思いやりが、自動吸引システム開発のきっかけとなりました。

1999年。山本さんは医師仲間や医療機器メーカーの社長(注2)と共に、自動吸引システムの開発を始めました。数え切れないほどの臨床実験と入念な試行錯誤を通して、多くの課題を次々とクリア。この努力の積み重ねによって、「カニューレ内低量持続吸引」というシステムが編み出されたのです。2005年のことでした。

「痰の自動吸引装置」の適応

自発呼吸、人工呼吸を問わず、気管切開をしているすべての患者が対象です。筋ジストロフィーやALSなどの神経難病、また中枢神経疾患などの患者に適し、呼吸器疾患で気管切開をしている場合の効果は限定的だそうです。

「痰の自動吸引装置」の装着

この自動吸引装置は、終日装着が想定されています。換気量にわずかな減少が生じますが、気道内圧の低下が1(cmH2O)以内に収まるように吸引量を設定すれば、臨床的にはほとんど影響はないとのことです。大量の痰を一気に取りたいような場合には、通常の吸引作業の並行も可能です。

「痰の自動吸引装置」の導入

導入のためには、専用の気管カニューレ(注3)への変更が必要で、さらに、専用の電動吸引機(注4)を自己負担(値段は15万円ほど、補助の対象で10万円程度)で購入しなければなりません。こうしたリスクもあるのですが、それだけの価値はじゅうぶんにあります。

より詳しい解説、導入の手順、使用方法については、筆頭開発者である医師、山本真さんの下記ホームページで、「自動吸引マニュアル」とQ&Aが公開されていますので、そちらを熟読ください。

「痰の自動吸引装置」使用の感想(土屋竜一)

使用環境
・人工呼吸器: LTV950 Plus (従量式、最低一回換気量:400ml、呼吸回数:15回/分)
・使用時間: 就寝から車いす移乗までの12時間

実際にやってみないと分からないことで、本当に使えるものか不安でしたが、意外なほど簡単に導入ができ、効果もすぐに現れました。体調に変化もなく、妻を一度も起こさずに朝を迎えられたのです。これは感動的でした。妻は夜中に起きる癖がついていて、「呼ばれないのに何度も目覚めた」と言っていますが(笑)。そのうち彼女も熟睡できるようになるでしょう。

夜間睡眠中に痰が出てくると、呼吸がひっかかるような違和感で目が覚めるものでした。しかし自動吸引中は違和を感じる前に痰が取り除かれ、常にスッキリとした状態となります。こうしたことから、私自身も不安や気兼ねなく、ゆっくり睡眠が取れるようになりました。

水様のさらさらとした痰だけでなく、気管の奥からゴロゴロと上がってくる濃い目の痰でもけっこう吸引してくれます。(注5) 私の場合は、朝食後に痰の分泌が盛んになります。「痰の自動吸引装置」を装着していれば、いちいち家族を呼ばずに済み、そこでも大いに助かっています。

この「痰の自動吸引装置」について、ご質問があれば、使用者の立場でお答えしますので、お問い合わせページのメールフォームからご連絡ください。とにかく、一人でも多くの人に、この「痰の自動吸引装置」のことを知ってほしいと思っています。

土屋竜一の自動吸引トリビア
・口が渇くような気がします。
・座位でも吸引可能ですが、臥位時ほどの満足な効果は得られませんでした。
・ACアダプタのコードが弱い感じで、接触が悪い時があります。

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