土屋竜一コメント集
私のモットー
私は筋ジストロフィーという、このような重い障害を抱えながら、日々を送っているわけですが、モットーとしているものが2つあります。「簡単にあきらめない」、それから「できることはすべてやってみる」。この2つです。
特に、「できることはやってみる」というのは、つまり「挑戦」です。私は10歳の時にこの病気であることが分かって、以来ずっと闘ってきました。初めの頃は、そんなに不自由ではありませんでした。それがある時から、急激に、いろいろができなくなっていったんです。昨日まではできていたことが、もうできない。いつものように鉄棒に向かったのに、上がることすらできなくなっている。いつもの階段がリズミカルに登れない。できないことが、どんどん増えていく。そういう中においては、自分にできること、というのが貴重になってくるわけです。
今現在、自分に何が残されているのか。私は、それを常に見つめてきました。何が出来るか、その「出来ること」というのが、その時の自分を象徴するんです。シンガー・ソングライターとして歌っていた頃、身体はもうずいぶん動かなくなっていたんですが、呼吸は何ともなくて、声もしっかりしていた。喋れる、歌える。だからそれに一生懸命になったというわけです。呼吸が駄目になって、歌うことはおろか、喋ることすらできなくなった。残っているのは何だ、そう考えるんです。ああ、音楽のスキルを活かして、作曲でやって行けるじゃないか。そうだ、文章力もある。じゃあエッセイなんかも書けそうだ、といった具合いにです。
2004年の暮れごろから、作曲を頼まれる機会が減ってきて、原稿の依頼もまったくない、そういう状況が続きました。やっぱり、じゃあ次はどうしようか、そう考えました。その時にはもう、私に残されていたのは、右手の小指を動かすことだけでした。これで何ができるのか。どんな仕事ができるのか。答えははっきりしていました。パソコンです。それで求めていたところ、沖ワークウェルと出会って、今日この時、ビジネスパーソンとしての自分があるわけです。
(2010年6月27日「重度障害者在宅雇用セミナー」での挨拶より)